- 素朴理論は経験や感覚から物事を理解しようとする行動のこと
- 日常生活に適応しやすくするために必要な考え方
- しかし、時によっては間違っていることもあるため科学的理解も必要
- 寒い日に外に出ると風邪を引く
このように教えられて、あるいは体験されて育ってきた方は多いと思います。
実際には風邪はウイルスによって引き起こされるものですが、体験的に私たちは寒い日に外出することが風邪の原因になると考えてしまします。
このような理論を素朴理論と言います。
日常生活や子供の考え方にも素朴理論は関わってきますし、物事を科学的に理解するための土台にもなる重要な理論です。
この記事では私たちの身近な理論である素朴理論のことについて掘り下げていきたいと思います。
素朴理論の基本概念
素朴理論(folk theory)は私たちの経験や感覚を基にして物事を理解しようとする行動のことを言います。
この素朴理論は主に子供の頃に周りの出来事を自分なりの見方で捉えることで、物事を関連付けて捉えようとしたり、これは生き物でこれは生き物ではないといった分類ができるようになったりすることに役立ちます。(1)
言い換えれば、私たちがこの世界を直感的に生きていくために必要な理論であると言えます。
日常における素朴理論の具体例
素朴理論は子供の成長段階のことで議論されることが多いようですが、大人の日常生活であっても素朴理論が適用されていることはよくあります。
例えば、この記事の最初にご紹介した寒い日に外に出ると風邪をひくであったり、植物に話しかけるとよく育つ、空が曇って暗くなると雨が降るといったりする考え方も素朴理論です。
このような素朴理論は私たちの日常生活を複雑に考える手間を減らし、適応しやすくなるための手助けをしてくれます。
子供の思考と素朴理論
子供の疑問は素朴理論を作り上げるための手助けとなっていることが多いです。
例えば「空はなぜ青いの?」という疑問は「空が青いのは海の色が反射しているからだ」というような子供独自の考え方を作り出す手助けをします。
このような素朴理論は子供の探求心を刺激し、物事をより深く学びたいというようなモチベーションにつながることもあります。
そこに新しい経験や学習により知識を得ることによって科学的理解へと進んでいきます。
先ほどの「空はなぜ青いの?」の例ですと、教師や親、本などからの学習によって「空が青いのは光の散乱によるものなんだ~」という科学的理解につながります。
しかし、素朴理論は科学的理解への前段階のように考えられていますが、どのようにして発展していくのかは分かっていません。(2)
元々持っていた概念が変化する、概念が増えていくという2つの考え方があるようですが詳しいことは現在研究途中のようです。
素朴理論の限界と科学的理解の重要性
素朴理論は日常生活を送りやすくするために必要な考え方です。
しかし、その考え方が必ずしも正しいとは限りません。
そのため、学習によって正しい理解をする科学的理解も必要になります。
ここで難しいのが正しい科学的理解を促すために、子供が育んできた素朴理論が実は間違っていることを認識してもらうことです。(3)
素朴理論で作り出した考え方では説明がつかないことがある…ということを示すのが効果的ですが、それは1人ではなかなか克服が難しいです。
そのために教育や読書といった学習は必要になってくると言えます。
まとめ
いかがだったでしょうか?
素朴理論は日常生活をコスパよく生きるために必要な考え方です。
しかし、それは時に間違っていることがあるということを頭に入れておく必要があります。
皆さんも気付かないうちに素朴理論で自分の世界を構築している部分があるかもしれません。
そのような面に目を向けてみるのも楽しみの1つになるかもしれません。
関連記事・参考リンク
(1)波多野誼余夫、稲垣佳世子(2003)『ヒト知性の生得的基盤』
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjsai/18/4/18_416/_pdf
(2)鈴木敦子『幼児の「心の理論」の発達 -どのようにして他者を理解してゆくのか-』
https://repository.dl.itc.u-tokyo.ac.jp/record/31621/files/KJ00002401045.pdf
(3)『科学概念の素朴な理解から概念変化、熟達まで』
https://cogpsy.sfc.keio.ac.jp/cog-learn/11cl03.pdf